-----少々早かったな。
曹丕が待ち合わせ場所に到着し時計を確認すると、まだ待ち合わせの時刻には15分ほどあった。
煉瓦造りの建物の壁により掛かり、見るともなしに街の風景を眺める。
定番のクリスマスソングが、そこかしこで響いており、街ゆく人は皆どこか楽しげに見えた。
ふいにその風景がキラキラと輝きだした。
「・・・寒いと思ったら、降ってきたか。」
見上げると街の灯りとは正反対の鈍色の空から、小雪がチラチラと落ちてきた。
-----綺麗なものだな。
雪の欠片が色とりどりのイルミネーションを反射して、赤や黄色に輝いている。
寒さに思わずコートの襟を立てつつも、こんな雪なら悪くはない、と暫く眺めていると
聞き慣れた声が曹丕の耳を打った。
「すまん、待たせたな。」
急いできたのだろう、頬を紅潮させ少々息を切らせた待ち人が現れた。
「いや、私も今来たばかりだ。それに・・・まだ待ち合わせ時刻の5分前だ。気にすることはない。」
「なに?まだ時間前だったか。珍しくお前が先にいるので遅れたかと思ったぞ。」
あの信号からお前の姿が見えたので走って来たのに損をした、などと
わざとらしく眉間に皺を寄せつつ文句を紡ぐが、その口元には微笑が浮かんでいる。
「・・・嫌みか?私とて、いつも遅れるばかりではないのでな。」
三成の様子に、けして本気ではない言葉が思わず口をついて出る。
「まぁ・・・いつも俺が待つばかりでは不公平だからな。偶にはお前を待たせるのも悪くない。」
「ふん・・・私は忙しい身なのだ。仕方あるまい。」
「はいはい。曹グループの御曹司殿は、俺と違って色々とお忙しいでしょうからねー。」
いつも通りの何気ない会話。 だが、その心地良さに心が軽くなってくる。
「その忙しい私を呼び出して、今日は何処に連れて行くつもりだ?」
「それは付いてきてからのお楽しみなのだよ♪その前に・・・」
ごそごそと紙袋を探っていた三成の手が、灰色の物体を手にしたかと思うと
いきなりバサリと曹丕の首に巻き付けた。

「メリークリスマス、曹丕。」
突然のことに曹丕は思わず僅かに身を引いて息を飲む。
「寒いからな。御曹司殿に風邪を引かせたとあっては、あとでお前の家の者に何を言われるか判らん。」
三成が柄にもなく頬を赤らめ、言い訳のように早口で言葉を紡ぐ。
首に巻かれたマフラーの暖かさが三成の体温のように思えて、
曹丕は体だけでなく心までが徐々に温まっていくのを感じた。

引いていた体を戻し、三成の額に己の額を合わせると、三成が驚いたように視線を上げた。
「曹丕・・・?」
「・・・お前が選んだのか?」
「当たり前だ!お前に贈る物を他の輩に選ばせるなど!」
「ふっ・・・そうか。ちょうど寒いと思っていたところだ。・・・やはりお前は察しが良い。」
「ふん、俺を誰だと思っているのだ?お前のことなどお見通しなのだよ。」
「フッ・・・三成・・・」
・・・感謝する、と触れそうな距離で囁くように曹丕の唇が動いた。
「曹丕っ・・・!」

吐息で叫ぶと同時にマフラーが引かれ、三成の唇が曹丕のそれを柔らかく塞いだ。
「んっ・・・」
ただ塞ぐだけの優しい口づけ。
暫くして温まった唇が離れると、二人分の白く熱い吐息が吐き出された。
「はぁ・・・こん、な街中で・・・」
間近で視線を合わせたまま、曹丕が呟く。
「お前が急にあんなことをするからだぞ、曹丕。」
額を合わせ囁く三成の顔には、隠しようのない照れと微笑が浮かんでいた。
「私の所為か?」
揶揄するように問うと、それ以外に何がある?と挑むような視線を寄越してくる。
「・・・で、次はどうするのだ?」
三成の視線を心地よく受け止めながら、微笑を浮かべて曹丕が問う。
「ふん、ついてきてからのお楽しみだと言ったであろう?・・・来い。」
そういうや否や、三成は曹丕の手を取り、喧噪の中を足早に歩き始めた---------