■嘘の果て(三丕/R18/挿絵1)

「なんだ?呆けた顔をして」

真剣な眼差しで机上の合戦図を睨んでいた曹丕がふと顔を上げた。
途中までは三成もその図を眺めて策を巡らせていたのだが、
不意に目に入った曹丕の横顔に目を奪われ、そのまま思考停止していたらしい。
顔を上げた曹丕と目が合ってそう言われ、我に返る。

「いや・・・」

大の男が同じ男の顔に見惚れるなど、我ながら恥ずかしいと思う。
だが、この曹丕という男の顔には、三成にそうさせるだけの色気があった。
いや、顔だけではない。
この男の醸し出す雰囲気全てに何とも言えぬ艶と色気、そして何にも汚れぬ気高さがあった。

「・・・?」

目が合ったまま黙り込んだ三成の様子に流石の曹丕も首を傾げる。
と・・・

「お前はやはり【曹子桓】なのだな・・・」

ゆっくりとひとつ瞬きをして、再び目を合わせた三成が唐突に切り出した。
最初は言葉の意味が解せず、僅かに眉間に皺を寄せた曹丕であったが、
暫く三成の表情を窺うと、得心したのか口端を上げて呟く。

「・・・・・・私に見惚れていたか?」
「ふん、安易に認めたくはないが・・・どうやらそうらしい」

予想外に簡単に認めて腕を組む三成の姿に、自然と曹丕の口元がほころぶ。

「ふっ・・・」
「可笑しいか?」

首を傾げ、片方だけ口角があがるいつもの笑み。

「いや・・・その言い様、実にお前らしい・・・」

正直な感想を述べると三成が右手を顎に当て、考え込むような仕草をした。

「俺らしい、か・・・」

ふっと息を吐きながら、自嘲気味な笑みで応える。

「なんだ?不服か?」

曹丕も腕を組み、いつものように顎を上げ気味にし、揶揄(からか)うように問う。

「いや、ただ・・・」
「ただ・・・?」
「まさかお前のような男の傍から離れられぬようになるとは思いも寄らなかった、と思ってな」

三成が苦笑混じりで答えた。

「・・・後悔しているのか?」
「まさか・・・」
「嫌になったら、いつでもどこへなりと去るがよい。・・・私は引き留めぬ」

思ってもいない言葉がスルスルと口に上って発せられる。
これは、自衛だ。いつの間にか身についてしまった、自己防衛の為の虚言。
だが、自分を守るはずのその一言一言を発する度に、己の内側が斬りつけられるように痛むのは何故なのか。

「・・本気か?」

三成の瞳が曹丕を見据える。
瞳の奥にゆらりと炎が灯ったように見えたのは気のせいか。

「冗談に聞こえたか?私にはお前を引き留める権利など・・・」

嘘は続く。自分自身を切り刻みながら。
そう、私にはそんな権利は無いのだ・・・。
元々お前は・・・

「俺がお前の元を去ることなど、たとえ天地がひっくり返ったとしてもあり得ん!」

三成の力強い声が曹丕の言葉を遮った。
同時に熱の籠もった瞳で見つめられ、曹丕は思わず息を飲む。

ああ、そうだ・・・私は、お前のその目が・・・

「ふっ・・・」

三成の視線から逃れるように瞳を閉じ、笑みを零す。

「何が可笑しい?俺は本気だぞ、曹丕!」

そういうと乱暴に席を立ち、真横に来て腰を屈め視線の高さを合わせると
真っ直ぐに曹丕を見つめた。
暑苦しいとも言えるこの真剣さ・・・

-------私はこの正直さに焦がれているのだ、もう、ずっと前から・・・

「・・・判っている。三成・・・」

不意に曹丕の右手が三成の頬に優しく触れた。

「なんだ、急に・・・」

不意を突かれた三成が少し狼狽えた。
そんな三成の様子に薄く笑って・・・

「ならば・・・遅れるなよ?」

吐息の掛かる距離で曹丕の蒼く煌めく瞳が三成を見据えた。

「フン、俺を誰だと思っている?お前こそ、俺を失望させてくれるなよ?」

曹丕の言葉に三成は一瞬目を見開いて驚いた様子を見せたが、
直ぐに口元をほころばせると曹丕の瞳を見つめ返し、横髪を優しく梳き流し始めた。

「それこそ、天地がひっくり返ってもあり得ん話、だ」

曹丕はその三成の手を掴んで瞳を閉じ、頬を寄せた。

「ふっ・・・それでこそ、俺の曹丕だ」
「・・・相変わらず図々しいことだ」
「今更、であろうに」
「ふっ・・・そうだったな・・・」

いつもと変わらぬやりとりを繰り返しながら、徐々に二人の距離が縮まっていく。
そして唇が触れる直前、三成の両手が曹丕の頬を包み込んだ。

「曹丕・・・」

熱い吐息と共に吐き出された音は微かに震えて聞こえた。

「三成・・・」

小さく囁くと、曹丕はゆっくりと瞳を閉じた。

------------------------------------------------------------

「んっ・・・ぁ、はぁ・・っ」

やっと解放された曹丕の唇は濡れて、熟れた果実のように真っ赤に染まっていた。
そこに三成がゆっくりと白い指先を這わす。
曹丕は荒い息を吐きながらも、這わされた指先に舌を絡め、時折音を立てて吸い付いた。
その様はまるで三成のモノを愛している時のようで、
上目遣いで見られると背筋を言い様のないゾクリとした感覚が駆け上った。

「曹丕・・・」

掠れた声で呼ぶと、曹丕が妖艶な笑みを見せ、ちろりと指先を舐めたあと、唇を離した。
そうして椅子に腰掛けたまま、目の前にある三成の袴の紐に手を掛ける。
シュルッ・・・と衣擦れの音が響いてから程なく、袴が床に落ちて小山になった。

「随分と窮屈そうだな。私が解放してやろう」

ニヤリと笑うと、曹丕は三成の褌を緩め、既に怒張している欲望を引き出した。

「曹・・っ・・くっ」

先程三成の指先に施したのと同じように今度は三成の欲望に舌と指を這わせる。
曹丕の舌はその体温とは逆に熱く蕩けるようであった。
舌と顎、唇を駆使して曹丕は三成の怒張を愛撫する。
途中三成の様子を窺うかのように見上げてくるその表情は淫蕩そのもので
三成は我慢出来ず、曹丕の頭を固定し自ら腰を激しく前後に動かし始めた。

「ぅん・・・うっ・・・んっ、んっ・・・」

途端に曹丕の眉間に皺が寄り、辛そうな表情が浮かぶ。
が、自由になる舌でお返しとばかりに刺激されるのを感じ、
三成は更に激しく腰を動かした。

「くっ・・・曹丕っ、出る・・・っ!」

そう苦しげに三成が声を漏らすのとほぼ同時に、
曹丕の喉の奥に熱いものが迸った。
思わず顔を引いたのと同時に2度目の飛沫が曹丕の顔面に散った。
首、胸元にも飛ばされ、胸から上は白濁にまみれた。

「はぁ、はぁ・・・はっ・・・曹丕、済まん・・・」

荒い息を整えながら三成が慌てて着物の端で曹丕の顔や体を拭こうとすると
曹丕の手がそれを制した。

「曹丕・・・?」

首を傾げて曹丕を見ると、ゴクリ、と見せつけるようにゆっくりと
口内に堪ったものを嚥下した曹丕が白濁を口端から滴らせながら妖しく笑った。
その尋常ならざる妖艶さに三成の喉が思わず小さく鳴った。

「いい・・・」

そう言うと、顔面に掛かった体液を指で掬い取り、
また見せつけるように差し出した赤い舌で舐め取る。
三成があっけにとられたように眺めていると、
曹丕は腰の防具を外し、下履きを床に落とした。
白い足がやけに艶めかしく、三成を煽る。
見れば、曹丕の欲望の中心は既に硬く起ち上がり、
上着の裾からニョキリと覗いていた。

「曹丕・・・?」

掠れた声で名を呼ぶと、また曹丕が妖艶な笑みを見せた。
そうして胸元と首元に散った白濁を指で掬い取り、
三成に背を向け、椅子に肘を付いて腰を上げた。
自然と三成の視線が曹丕の双丘と秘所に釘付けになる。
それを知ってか、曹丕は片膝を椅子に乗せると見せつけるように腰を高く上げ
晒された秘所に先程掬い取った三成の体液を、自ら塗り込め始めた。

「んっ・・・ぁん・・・はっ・・あっ・・ん・・」

三成の白濁と自らの体液にまみれた曹丕の指先が秘所に出し入れされる度に
ぬちゃ、ぐちゅっといういやらしい水音と共に曹丕の喘ぎ声が響く。
その痴態に先程吐き出したばかりだというのに、
三成の欲望は既に堅さを取り戻し天を仰いでいた。
自然と手が自らのモノを掴み、擦り上げる。

「あっ・・んっ、三成・・っ、自分だけで、達くのは、許さん、ぞ・・・っ」

三成のその様子を見た曹丕が途切れ途切れに促す。
その声を聞いた途端、三成がハッとしたように我に返った。

「お前のそんな姿を見て、我慢出来るものか・・・!」

そう叫ぶように言うと、弾かれたように曹丕に覆い被さった。
そうして自らを愛撫する曹丕の両手に素早く己の手を添える。
曹丕の手の上から欲望を擦り上げ、先端を弄り、
曹丕の指に重ねて秘所を貫く。

「ひぅっ・・・ぁっ、あっ、ん、やっ・・三、成っ・・激しっ・・!」

強烈な刺激に曹丕の体がビクビクと波打つが、その手が離されることはない。
三成は項や首筋、耳朶に舌を這わせながら、更に行為を続ける。

「あっ、あっ、やっ・・三、成・・も、やぁ・・っ!」
「いや、ではないであろう?」
「んっ・・くっ・・や・・もう、指は・・・っ」

自らの指を離し体を返すと、涙目になって懇願する曹丕に三成が更に追い打ちを掛ける。

「ん?何が欲しいか言わねば、このまま達かせてしまうぞ?」
「やっ・・あっ・・んっ・・くっ・・・ふっ・・っ!そこ、やめっ・・・やっ・・!」

なかなか言わない曹丕に焦れて、三成の指が曹丕の弱いところを擦り上げた。
正直、三成の理性も限界ギリギリなのだ。

「曹丕、どうする?このまま独りで達くか?」
「やっ・・三成、と繋がり、たい・・んっ・・繋がって・・・二人で、達きたっ・・あっ」
「俺もだ、曹丕・・・」

三成は曹丕の額に軽く口づけると、指を引き抜き、
机に曹丕の体を横たえ、濡れそぼった秘所に己の欲望を宛がった。

「三成・・早く・・っ」

曹丕が両手を伸ばしてくる。

「曹丕・・・」

その音が終わるか終わらないかのうちに一気に奥まで貫いた。

「ふ、あぁぁぁっ!」

曹丕が三成の首筋に両手を回し、背筋を反らせ、両脚を腰に強く絡めた。

「奥まで入ったぞ、曹丕・・・」
「ん・・・」

涙の滲んだ目で見上げてくるその顔を見ただけで
三成の腰に抗いがたい衝動が走り、無意識に僅かに腰が揺れた。

「ぁっ・・んっ・・・三成、もっと・・・」

強請るように曹丕が腰を揺らめかせ、三成の欲望を締め付けてくる。

「くっ・・・もう、どうなっても知らぬからな?」

言い終わらぬうちに、欲望に任せて大きく腰を使い始めた。

「ふっ・・ぁっ・・あっ、んっ・・三成、あっ、そこ、熱っ・・んっ、あっ、あっ」
「曹丕・・・っ」

合戦図を見て難しい顔をしたり、不意に無邪気な笑顔を浮かべたり、
誘うような妖しい顔をしたかと思えば、羞恥に染まった可愛い顔を見せ、
情欲に溺れた淫蕩な顔にもなる・・・。
全く・・・お前という人間は、どれだけ俺を惑い狂わす表情(かお)を持っているのだ?
同じ時を過ごせば過ごすだけ、その落差に惹かれてしまうではないか、この俺ともあろう者が。
だが、曹丕・・・覚えておけ。
その表情(かお)は俺以外には未来永劫、誰にも、誰にも・・・っ!

--------------------熱く燃える思いを胸に滾らせながら、三成は曹丕の体を掻き抱いた。

SS_TOP