■嘘の果て(三丕/R18/挿絵1)

夜半、独り起き出した曹丕は、回廊に佇み、
青白く照らされた中庭を、見るとも無しに眺めていた。
中央に作られた池には、蓮が大輪の花を咲かせていた。

「眠れないのか?」

傍にあった温もりの消失に気づいた三成が起き出してきて、背後から声を掛けた。
その問いには答えず、僅かに顔を向けただけで曹丕はまた中庭に視線を戻した。

「こんな世界でも花は咲くのだな。」

いつの間にか横に並んだ三成が呟く。

「そうでなくては困る。」
「・・・何故だ?」
「花も咲かぬような世界を統べても、つまらぬからな。」

初めて三成の目を見た曹丕が口端を上げた。

「なるほど。道理だな。」

つられて三成の口元も綻ぶ。
その時、湖面を揺らしながら風が吹きつけ、二人の髪を乱した。

「良い風だな。」
「ああ。」

吹き抜ける心地よい風に曹丕が目を細める。

「・・・眠れそうか?」

風が収まると、三成が問うた。

「さて・・・」

曹丕は庭を見たままだ。

「ならば、眠れるまで少し付き合え。」
「・・・何だ?」

曹丕が振り向き、訝しげに三成を見た。

「昼間の決着がまだ付いていないだろう?これだけの月光だ。見えぬ事もあるまい。」

そう言って三成が部屋にある盤を指さした。

「フッ・・・そうだな。眠れぬのならいっそそれを愉しむのもまた一興か。」

三成の示す先を見やり、曹丕が微笑う。

「ならば、戻るぞ。夜は長いとはいえ、お前との勝負は時間が掛かりそうだからな。」

そういって、三成が先に歩き出す。

「眠気が襲う前に決着が付くのでないか?」

私が勝つのは言わずと知れたことだが、と付け加えて曹丕の口端が上がった。

「ほぅ、言ったな。俺の采配を存分に見せようではないか。」

三成の片眉が上がる。

「せいぜい愉しませてもらおうか。」

どちらに軍配が上がったのかは月光のみが知る・・・。

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